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ガス貯蔵材料などに活躍、柔らかい次世代多孔性結晶開発へ ――孔の硬さと大きさが変化し、分子の吸着・脱着状態が安定化――

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

ガス貯蔵材料などに活躍、柔らかい次世代多孔性結晶開発へ ――孔の硬さと大きさが変化し、分子の吸着・脱着状態が安定化――

image: 東京大学 生産技術研究所の光元 亨汰 特任研究員、高江 恭平 特任講師は、ナノメートルサイズの小さな孔に選択的に分子を吸着し、消臭剤や脱水剤、触媒などで活躍する、柔らかい多孔性結晶の新たな理論モデルを提案し、分子吸脱着を制御する指針を得ました。 分子吸着によって結晶の硬さや孔の大きさが変化することで、吸着・脱着状態が安定化されることが明らかになりました。 優れた安定性を示すガス貯蔵材料や触媒など、機能的な多孔性結晶開発への応用が期待されます。 view more 

Credit: 東京大学 生産技術研究所

 東京大学 生産技術研究所の光元 亨汰 特任研究員、高江 恭平 特任講師は、金属有機構造体(Metal-Organic Framework; MOF) における分子吸脱着過程に対するモデルを、統計物理学の手法を用いて提案し、コンピュータシミュレーションにより、硬さの不均一性が分子吸脱着転移におけるヒステリシスに対して本質的な役割を果たすことを明らかにしました。

 活性炭やゼオライトなどの多孔性材料は、ナノメートルサイズの小さな孔に選択的に分子を吸着する性質を持ちます。この性質を利用することで、消臭剤や脱水剤、触媒など、様々な用途で使用されています。近年、次世代の多孔性材料として、金属有機構造体(MOF)が注目されています。従来の多孔性材料よりも柔軟な格子構造を持ち、分子を吸いこむことで膨らんだり縮んだりします。そのやわらかさを利用して、燃料ガス貯蔵や、ガス分離によるCO2の排出削減など、エネルギー・環境問題の解決が模索されています。しかし、MOFの中でおこる現象については、未解明な部分が多く、とくに、吸い込まれた分子によって、結晶の硬さや孔の大きさが変化することが、吸着状態と脱着状態の転移や、吸着分子の分布など、吸着の性質にどのように反映されるかについては、明らかにされてきませんでした。

 本研究は、分子の吸着過程はどこでも同じではなく、吸いこんだ領域のみ、部分的に硬さが変わることに注目しました。この、部分的な硬さのちがいが、分子の分布に影響をおよぼし、ヒステリシス制御につながることを明らかにしました。この結果は、機能的な多孔性結晶を開発するための物理学的指針を提供するものです。近年、活発となっているAI技術を利用した材料設計の枠組みに、硬さの変化という要素を組み込むことで、優れた安定性を持つガス貯蔵材料や触媒などの開発への応用が期待されます。


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