PhyloBoneプロジェクトの新しい研究により、骨形成と骨再生において調節的な役割を果たす可能性がある骨マトリックス内の数百の非コラーゲン性タンパク質が特定されました。この研究は、骨再生と骨粗鬆症の研究において新たな治療法開発や予防策改善に寄与する可能性を示唆しています。PhyloBoneプロジェクトの共同主任研究者であるPere Puigbò博士は、「PhyloBoneプロジェクトは進化生物学の原則に基づいた新しいアプローチを利用して骨マトリックスを研究し、分子メカニズム解明と新しい薬物標的の特定に大きく貢献するでしょう」と述べています。
骨粗鬆症は、高齢化社会で最も大きい問題の一つです。年間約900万件の骨折が骨粗鬆症によって引き起こされており、平均して3秒に1つの骨折が発生しています。これは先進国における罹患率と死亡率に大きく影響しています。世界的に平均寿命が延びていることから、骨粗鬆症は生活の質に重大な影響を与える問題となっています。骨マトリックスは構造的および調節的な役割を果たすため、非コラーゲン性有機成分は骨の調節において重要な機能を持ちます。現在、オステオポンチンなどのごく一部の非コラーゲン性タンパク質が骨形成において重要な役割を果たすことが知られています。骨マトリックスは、骨再生と骨粗鬆症において重要な調節的な役割を果たす可能性のある数百のタンパク質で構成されていますが、全貌の理解が不十分であるのが現状です。
PhyloBoneプロジェクトでは、30種類の脊椎動物から255種類のタンパク質を同定しました。このプロジェクトは、骨再生、骨粗鬆症、および関連する分野の研究において貴重な情報源となることを目指しています」とPuigbò博士は述べています。PhyloBoneプロジェクトのデータベースはBone Research誌に掲載されました。このSigrid Jusélius Foundationと日本学術振興会によって資金提供されたプロジェクトは、ヒトおよびモデル生物の骨マトリックスタンパク質の最も包括的な情報源を提供し、骨再生、骨粗鬆症、および力学生物学の研究分野に貢献することが期待されます。PhyloBoneプロジェクトの共同主任研究者である中村美穂博士は、「我々の研究は、いくつかの非コラーゲン性タンパク質が骨形成と骨再生を調節するための重要な因子であることを示しています」と述べています。 中村博士はさらに、「プロジェクトの今後の展開では、いくつかの骨マトリックスタンパク質について、骨再生と骨粗鬆症におけるの調節的な役割について、実験的な証拠を得ることを目的としています」と付け加えています。
Journal
Bone Research
Article Title
) Phylobone: A comprehensive database of bone extracellular matrix proteins in human and model organisms
Article Publication Date
15-Aug-2023